近年、アシネトバクターの薬剤耐性の強力な致死性細菌が、病院など医療施設で新たに広がりつつあり、医療関係者は頭を抱えております。今までは、圧倒的にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が院内感染で恐れられてきましたが「アシネトバクター・バウマニ」と呼ばれる耐性菌による被害が急増との研究報告が、英医学雑誌「Lancet」に掲載され注目を集めました。
「アシネトバクター・バウマニ」は健康な人には、全く影響ありませんが、日和見(ひよりみ)感染を起こすことがあります。日和見(ひよりみ)感染とは、体力・免疫力の弱まった人に感染して病気を起こすような場合を言います。特に病院や老健施設には、体力・免疫力の弱まった人が多いので、院内感染を引き起こしやすいといえます。体力・免疫力の弱まった人での感染では、アシネトバクター感染症が死因となる場合や、死亡に寄与する場合がありえます。
そんな厄介者である、アシネトバクターに対しても、オゾンは効果があると言われております。下記は、オゾンによるアシネトバクターの除菌効果を示す試験結果です。
オゾンによる除菌試験
■目的
オゾンが、アシネトバクターに対して除菌効果があるか試験を行った。
■試験方法
供試微生物
以下の2種類を独立行政法人製品評価技術基盤機構(NBRC)より購入し、SCD液体培地により増殖させた微生物を使用した。
アシネトバクター;Acinetobacer calcoaceticus NBRC12552(ATCC14987同等)
直径9cmの培地に約105個のコロニーを形成するように生理食塩水を用いて調整した後、ガラス棒を用いて塗抹した。
■培地
SCD寒天培地(日水製薬製)を使用した。
■試験機関
株式会社メイプルバイオラボラトリーズ
■試験手順
①縦、横3.6m、高さ2.7mの部屋の一部をビニールカーテンで仕切り、約25立方メーターの容積を持つ空間を設定した。窓はビニールテープで目張りをした上、ビニールカーテンを貼り空気の流通を防ぐようにした。出入り口は硝子ドアーで、その外側に約半畳分の前室が設置されており二重扉になっているため発生したオゾンガスの漏れは最小限に止められる。
②部屋の対角線上の角部分2ヶ所及び中央部分の床に供試菌を塗抹した培地をそれぞれ5枚ずつ置き、一端にオゾン発生装置(ActivO-J)を設置した
③オゾン発生装置を作動させると同時に各培地のフタを取り供試菌にオゾンを暴露した。
④5分、10分、15分、20分、30分ごとに各位置3箇所の培地1個ずつにフタをして回収した。
⑤回収した各培地を35℃のインキュベーターで2日間培養した後、各培地に増殖したコロニー数を計測した。
■オゾン濃度
所定のオゾン暴露時間に培地を取り出す時、オゾン濃度をガステック検知菅(18L及び18M)を使用して計測した。
測定結果を以下の表及び写真に示す。
0分 | 5分 | 10分 | 15分 | 20分 | 30分 | |
---|---|---|---|---|---|---|
位置2 | 0 | 5ppm | 10ppm | 18ppm | 20ppm | 20ppm |
■測定結果
所定のオゾン暴露時間に培地を各位置から取り出し、35℃で2日間培養した。得られたコロニーを計数した結果を以下に示す。
コロニー数 | 0分 | 5分 | 10分 | 15分 | 20分 | 30分 |
---|---|---|---|---|---|---|
位置1 | >105 | >104 | 2.2×103 | 5.2×102 | 1.7×102 | 1×100 |
位置2 | >105 | >104 | 2.7×103 | 6.0×102 | 7.2×101 | 0 |
位置3 | >105 | >104 | 2.3×103 | 5.9×102 | 3.1×101 | 0 |
■考察
アシネトバクターにオゾン発生装置(ActivO-J)を用いてオゾンを暴露した結果、30分以内にほぼ全ての菌を殺菌することが出来た。