オゾンの安全性・危険性について

オゾンは安全?危険?どっち?

火は便利な半面、使い方を誤ると、火傷をしたり火災が起きたりします。

では、オゾンは?

答えは、便利な半面、高い濃度を吸い続けると、ダメージを与えることもあります。つまり、火と一緒で、私たちの使い方ひとつで、便利にもなり、危険にもなります。

オゾンが、なかなか市民権を得られない理由として、『オゾンは危険だ』『吸い込むと呼吸器に影響がある』。オゾン=危険という言葉が独り歩きしていることが大きな理由です。

大切なのは濃度管理

人間は様々な化学物質を利用して上手く利用して生きており、今や、切っても切っても切り離せない関係になっております。化学物質が環境や人体に悪い影響を与える可能性を『環境リスク』といいますが、それがどの程度の濃度であるかが重要であり、初めてリスクがあるのです。

アルコールを大量に摂取すればアルコール中毒になります。塩も、摂取量が多いと、心臓や腎臓に負担が掛かります。あくまでも、量や濃度が問題なのです。オゾン=危険と考えている人は、お酒=危険、塩=危険と言っているようなものです。夏の風物詩、香取線香にはピレスロイドと言われる殺虫成分が入っておりますが、蚊取り線香で健康被害を受けた、入院した人など聞いたことがないと思います。危険性といえば火傷ぐらいで、蚊に刺される方がよっぽど危険です。これも、ピレスロイドが人間に対して健康被害がない濃度で使用しているので、健康に問題がないのです。もちろん大量に曝露されれば、健康被害を受けることは言うまでもありません。適切な濃度管理さえ守れば、こんなに便利なものはありません。

また、オゾンは必ず酸素に戻るという性質があります。その為、オゾンは薬剤と違い、残留性がありません。安全なものにするのも、危険なものにするのも私たちの使い方で、オゾンは決して悪くありません。

オゾンに関する基準等

作業環境基準

  • 日本産業衛生学会
  • 許容濃度4) 0.1 ppm(0.2 mg/m3
  • (提案年度1963 年)

労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に、当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度。

室内環境基準

①アメリカ合衆国食料医薬品局(FDA)
0.05 ppm(24 h)(最大許容濃度)(1992 年)
②日本空気清浄協会
オゾンを発生する器具による室内ガスの許容濃度
(設計基準、暫定)(1967 年)
最高 0.1 ppm 平均 0.05 ppm

業務用のオゾン発生設備等

「オゾン利用に関する安全管理規準」(平成17年3月)5)に、「オゾン発生設備が収納されている室のオゾン濃度が0.1ppmを超えた場合、警報を発する手段を講じること。」など、業務用のオゾン発生設備等の安全な利用についてまとめられている。

労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に、当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度。

家電製品

オゾンは、家電製品にも広く利用されているが、安全性への配慮もされている。エアコンや冷蔵庫では、製品内部の脱臭、除菌等を目的としてオゾンが利用されているが、各メーカーでは、基本的にオゾンが室内には漏れ出ないような構造にしており、万が一漏れ出た場合にも、0.05 ppm 以下に設定している。

■ 産業現場におけるオゾンの人体への影響

オゾン濃度(ppm) 主な自覚症状 臨床所見 作業内容 文献
0.25 なし ガスシールド溶接 Kleinfeld
0.3〜0.8 喉の刺激 なし 同上 同上
0.9 喉の刺激
頭痛、疲労
  同上 同上
0.8〜1.7
口や喉の渇き
鼻、眼の刺激
胸部圧迫感
トリクロロエチレン溶接 Challen
0.47 粘膜刺激 Flury.Zernik
0.94 強い粘膜刺激
眠気
    同上
0.94 脈拍数増加
眠気、頭痛
    同上
0.1〜0.6 胸骨下の痛み
咳、粘膜刺激
なし 航空機飛行 Reed
1.05〜1.27 なし PF値 V75.V50.V25. 低下 ガスシールド溶接 大森ら
0.40〜0.46 なし PF値 V75.V50 低下 同上 同上
0.28 なし PF値 V75 低下 同上 同上

注記:PF:Peak flow rate,V75〜25:努力性肺活量の75%位,50%,25%位
出典:平成15年度省エネルギー型廃水処理技術開発報告書(NEDO)
産業現場におけるオゾン暴露の報告はほとんどが溶接作業によるものである。

■ 気中オゾン濃度とその影響(日本産業衛生学会)

空気中濃度 影  響
0.1ppm
臭気を認めうる
0.1〜0.3ppm 呼吸器の刺激
0.4ppm 気道抵抗の上昇
0.8〜1.7ppm
上気道の剌激症状
1.0ppm 咳嗽、疲労感
1.5ppm 2時間で時間肺活量の20%減少、咳嗽、胸痛、精神作用減退
9.0ppm以下 呼吸困難、肺うっ血
1,700ppm以上 数分間で死亡

■ 生体へのオゾンの影響

空気中濃度 影  響
0.01ppm 敏感な人の嗅覚閾値
0.01~0.015ppm
正常者における嗅覚閾値
0.06ppm
慢性肺疾患患者における嗅気能に影響ない
0.1ppm
正常者にとって不快、大部分の者に鼻、咽喉の刺激
(労働衛生的許容濃度)
0.1~0.3ppm
喘息患者における発作回数増加
0.2~0.5ppm
3~6時間暴露で視覚低下
0.23ppm
長期間暴露労働者における慢性気管支炎有症率増大
0.4ppm
気道抵抗の上昇
0.5ppm
明らかな上気道刺激
0.6~0.8ppm
胸痛、咳、気道抵抗増加、呼吸困難、肺のガス交換低下
0.5~1.0ppm
呼吸障害、酸素消費量減少
0.8~1.7ppm
上気道の刺激症状
1.0~2.0ppm
咳嗽、疲労感、頭重、上部気道の乾き、2時間で時間肺活量の20%減少、胸痛、精神作用減退
5~10ppm
呼吸困難、肺うっ血、肺水腫、脈拍増加、体痛、麻痺、昏睡
50ppm
1時間で生命の危険
1000ppm 以上
数分間で死亡
6,300ppm 空気中落下細菌に対する殺菌

出典:平成15年度省エネルギー型廃水処理技術開発報告書(NEDO)